ヨーロッパの中世からの都市はコンパクトシティとよく言われるが、自分で経験してみないとわからないので、フランスのディジョンという手ごろなサイズの都市で、中心市街地からひたすら都市の外側へと歩いてみた

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2007年11月28日

フランス中部の東より、ディジョンという町に。
ワインで有名なブルゴーニュ地方の州都で、中世は公国の首都。
といっても人口15万人足らずの小さな町で、歩き回るには手ごろなかわいい町。

この町を訪れた理由は、建造物保全や歴史的景観の整備で有名だから。
というのと、ヨーロッパの中世都市ってコンパクトなのか?ということを体験してみたかったから。
都市の中心から、ひたすら外へ向かって歩いてみることにしました。
ディジョンは人口も少なく、都市の規模はそんなに大きくないだろうという判断。

というわけで、駅に降り立ち。
中心市街地の宮殿前の広場からスタート。
この時点で夕方16時になっており、どんどん周りが暗くなってきている。
(中心と外側を2日かけて歩いているので、行きに撮った写真と帰りに撮った写真が混在しています。)

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14世紀に立てられた宮殿。
現在は市役所と美術間になっている。
都市、王国の中心。

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宮殿前のリベラシオン広場。
クリスマス前の準備で忙しい。広場的利用ができない状態で、少々残念。

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広場周辺を歩き回る。
統一感があるなかにも、よくみると個々はばらばらのデザインにもみえる。
これは周囲との建物高さ、窓枠高さなど、要素のデザイン統一が進められることで、全体的なまとまりが生まれるように工夫されているためだと。
その他にも看板に関して、その位置やデザインに関する規制も行われている。

フランスではモニュメント的な建造物の周囲500mは面的な保全がなされる。
その他、修繕を目的とした制度(結果的には景観形成に寄与)など複合的な仕組みの中で景観形成が図られている。
90年代からは地方分権を進める中で、景観づくりにおいても地方の独自の取り組みが可能になってきている。

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少し外側に向けて歩くと、集合住宅に出会う。
中心市街地の街並みを意識したものだろうか。
ディジョンの人はどういう印象を受けるのか気になる。

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暗くなり、中世のくねくねした道で構成される中心市街地をさまよう。
聖堂とか目印になりそうな建物とコンパス&地図を頼りに進む。

やはりモール化された街路がある。
ちなみにディジョンでもLRTの導入が検討されているとか。
ここに進入禁止の標識があるということは、ここから中心市街地を出るということか。

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道が太くなる。
歴史を感じさせる建物が、現役で集合住宅として使われている。
建物高さは比較的同じで、通りに沿って建物が並ぶ景観が奥へと続いている。
駐車場は道沿いにスペースが設けられている。


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何らや日本でもありそうなマンションです。
建築が比較的自由な感じになってきた。

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さらに少しあるくと、戸建住宅が並ぶエリアに。
写真は2日目の帰りに撮影したものだが、行きはものすごい濃霧が発生。
ただでさえ寒い(5度以下)のに、湿っぽい冷気はどんどん体から熱を奪う。
海外の映画でお化けが出るときには霧が出るけど、確かに自然への恐怖を感じる。
おっきい荷物を背負い、道もいまいち自信がないなか、めげそうになる。

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やっとのことで宿に付く。
この計画に合わせて、中心から少し離れた宿を選んでおいた。
ユースホステルではないけれども、部活の合宿とかしそうなところに泊まる。
4人相部屋。

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翌日。
昨日はわからなかったけれども、すぐ前には集合住宅団地。
5階くらいの並びが、日本を思い起こさせる。

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天然芝のグラウンドがある公園。
奥には、最近日本にも進出してきているIKEAが見える。
いくらええ家具置いてても、郊外の土地利用と景観をあきらかに混乱させてる。
日本では神戸ポートアイランドや大阪大正など、湾岸部遊休地が中心みたいやけれども、そのうち郊外にも攻め入るやろう。

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少し歩くと高速道路。
先程のIKEAも高速道路IC沿いに立地している。
だんだん景色がおおざっぱになってきた印象。

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高速道路を越えると集合住宅団地が再び。
いろんなデザインが。

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そして上記の団地の前には市民農園
市街地の周縁部に来ていることを実感。

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近隣センター(のような商業施設)が登場。
顔の見える商売が展開されていて、千里NTを思い起こさせる。
ということは、おそらくあまり元気ではない??
たっぷり駐車場もある。ここだとクルマがないと暮らしにくそう。

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さらに歩くと長い下り坂にそって戸建住宅街が現れる。
歩道もゆったりしていて、ええ住宅地なんやと感じる。
屋根と壁の色に関しては何か規定があるんやろうか?ここでもいくつかの要素の統一で、全体の調和を図ろうとしているのがわかる。

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けっこう規模の大きい家もある。

そして更に坂道を下りきると。
急に目の前の景色に変化が。

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市街地のはしっこや!
農地が広がってる。

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農地の際には、さらに新しい戸建住宅地が。
街区内の歩行者専用通路なんて、新しい感じ。

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オープンな外構も新しい感じ。
こんなのを真似して日本の戸建の流行ができるんやろうか?
全然別の地域の同じものを真似したのやろうか?
それとも考えてることがいっしょなのか?

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先程の住宅地の横は農地。
日本で言えば、市街化区域と市街化調整区域の境界だろうか。
日本だと境界付近はいろんな事情で、調整期区域にもはみだして建設が行われてしまうけれども、ぴっちりと境界線が見て取れる。

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これまた境界線がきっちり。
奥の小高い丘に住宅地が張り付いていて、手前の平地には農地が広がる。
間のごちゃごちゃしたところは、再び市民農園
都市と農との緩衝地帯のように存在している。

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市民農園の様子。
ドイツでもそうやったけれども、やはりごちゃごちゃしている。
行政が管理しているんやろうか?どういう仕組みなんやろう。

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少し周りを見渡してみると。
工場か倉庫のようなものが少し遠くに見える。
日本の都市周縁部と同じような光景。

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農地の中の道を歩いていく。
ワインの産地なので、ぶどう畑なんてあればええなと思うがない。
冬ということもあってか、野菜らしい野菜もない。

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ひたすら一本道が続く。
この広大な畑地が広がる風景は日本にはなかなかない。
でも、寒さと絶えず吹き抜ける冷たい風にめげてくる。

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緩やかな地形の起伏がありながらも、農地が続いている。
遠くの丘に隣の町が見える。
日本やったらこうした平野部では市街地が連坦しているので、隣町を遠くに眺めるというシーンはあまり無いように感じられる。

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30分近く農地の真ん中を歩いていて、また同じ道を帰ると思うとつらくなってきた。
そんな中、遠くに一軒の家が見えてきた。

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近寄ってみると、農作業の機械などが置かれており、農家だとわかる。
作業場も含めて大きな家。

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家の横には、馬が。
農業以外にも牛や馬を飼っている様子。
中心部から歩くこと、のべ数時間。
農村的エリアにやってきたことを実感。

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けっこうたくさんの牛や馬が飼われている。
体力は減ってきましたが、少し元気がでる。

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牛と馬たちを後にして、さらに進む。
歴史を感じさせる灌漑設備が。
文化的景観というやつでしょう。

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さらに進む。
寒さで体力と気力がなくなって、
幹線道路らしきものにぶつかったところで、ゴールということに。
いちおう、お馬さんが最後を見届けてくれた。

というわけで、フランスのディジョンを舞台にした、
中世都市がコンパクトっていうけどどうなんや?実際に歩いてみようの旅が終了。
(ルートは下のGoogleMapで確認できます。)



この企画をやってみて、コンパクトシティ観が少々変わったように感じる。

まず30万人くらいより少ない人口規模で初めて成立するんやと思う。
しかも隣の都市と重ならない、独立した都市圏を有しているということ。
そうでなければ、都市の中心がどこなのかもわからない。

日本では中心市街地の話ばかりがされている。
確かに中心市街地では歩いて暮らせる生活圏とそれを彩る文化と歴史が存在する。
しかし少し離れてみれば、歩いて中心まで行くには大変な住宅地がたくさんある。
それらを公共交通でネットワークするのか、個々人がクルマで移動するのか。
交通の問題と併せての議論が少ない。
富山のLRTの政策のような例がでてきているものの、まだまだ。

それにコンパクトな中に、生活圏が複数存在している。
コンパクトだからといって、みんな中心で生活しているわけではない。
少し郊外へと向かえば、そこでの近隣生活圏があり、機能している。
郊外型のショッピングセンターもある。
中心に、中心に。
というだけでなく、今ある状況をスタートにした土地利用や交通の戦略が必要。
15万人都市でこうなのだから、日本のゆるゆると連坦した大都市圏の市街地なんかはなおさらのこと。
中世都市への羨望が、なんか当たり前のものを見えなくしているようにも感じた。

ただ縁辺部の土地利用や景観なんかは、日本のほんまに計画しているのかわからんような、例外だらけの混乱した状態とは違って、市街地と農地との境界がぴっしりとあるのは感動的やった。
もちろん細かく見ていけば、いろいろ日本のような問題はあるのだろうけれども。

冬の寒い中、一人で旅してたからできたような企画。
体力と気力をすり減らしただけのものがあった。


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