「高槻を中心とする大阪府下における 寒天産業の歴史的・文化的・社会的特性」について

高槻市北部の里山景観(文化的景観)は、地域の自然環境に即した農林業・寒天製造などの生業や、生活文化が継承されることによって、その価値が形成され、また維持されてきました。しかし、近代以降、特に第二次世界大戦以降の生活様式と産業構造の変化の中で、これまで里山景観の価値を支えてきた様々なシステム・要素が消滅・弱体化し、里山景観の将来的な保全に向けた様々な対策が必要とされています。

特に寒天製造という海産物を原材料とし、製造にあたっては内陸地の寒冷な気候を必要するという特殊な要件を有する産業の特性から、原材料および製品の流通往来に係る様々な歴史的・文化的な資源が地域に点在しています。しかし、流通形態の変化、また地域における寒天産業自体の衰退に伴い、寒天産業に関わりのない人々にとって、このような寒天の流通往来に係る資源に触れる機会がほとんど無い状況にあります。

そこで、これらの地域資源の存在およびその価値を知るきっかけとなるもの、また学ぶ際の教材となる資料を作成しようと思いました。
公開しようと思いながら、作成から2年近くが経過していましたが、小説&ドラマ「銀二貫」で寒天に注目があつまるなか、寒天という切り口で自身の地元高槻を知ってもらう、また学んでもらえらばと思いWebに公開することにしました。

寒天を通じて、高槻を含む、北大阪地域の様々な特性が見えてきます。(淀川を通じた流通往来、大阪天満との関係、丹波地域との関係、気候、森林資源利用、地域の伝統的な知恵、都市化の進展など)
北大阪から南丹に至る地域特有の文化圏が見えてくるかと思い、個人的に研究はほそぼそと行っています。

 

※9編からなる全文PDFはこちらからダウンロードできます。

※本文は平成24年度にNPO法人ノートの依頼で筆者が調査した内容を、依頼者の許可を得て掲載しています。

■参考文献
大阪府経済部水産課(1951)『寒天の地理学研究』
・大阪乾物商同業組合(1933)『大阪乾物商誌』
高槻市役所(1984)『高槻市史 第2巻 本編Ⅱ』
・福山昭(1970)『「近世寒天業の賃労働者」大阪教育大学紀要第19巻』
国民新聞(1934年10月20日付「寒天の製造 輸出副業に適す 農林省でも奨励」」所蔵:神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫
・岡市正(1995)『目で見る茨木高槻の100年』
・高槻青年会議所(1977)『ふるさとの風土 高槻』